1988年に生まれ、幾度もの変遷を経た伝説のアームチェアが、キーブーによってついに誰もの手に届く椅子になりました。
その椅子の輪郭を見た瞬間、誰もが何かを思い出します。
二つに割れた背もたれ、大きく丸いフォルム。これはロン・アラッドが1988年に生み出した「ビッグ・イージー」を原点に持つアームチェアです。
ギャラリー作品として発表されたそのかたちが、キーブーによってついに工業製品となりました。
<目次>
1. どんな椅子か? ──伝説の輪郭
2. デザインの背景 ──「ビッグ・イージー」から生まれた名作の系譜
3. 素材と仕様 ──イタリア製ポリエチレンの実力
4. スタイリング提案 ──屋内・屋外での活かし方
1. どんな椅子か? ──伝説の輪郭
ドントエフケーウィズザマウスは、イスラエル出身のデザイナー・ロン・アラッドが1988年に発表した「ビッグ・イージー」を原点とするアームチェアです。
二つの背もたれが角度を持って交差し、深く包み込むような座り心地を生み出します。
背もたれに備わる二つの丸い膨らみは、世界中の子どもが知るあの愛らしいネズミのキャラクターの耳を想起させます。
「マウス(ネズミ)に手を出すな」という挑発的なタイトルは、大衆文化のアイコンへのオマージュであると同時に、ロン・アラッドらしい知的な遊び心の表れです。
ギャラリー作品として発表されたこの椅子が、キーブーによりリサイクル可能なポリエチレン製の工業製品として生まれ変わりました。
デザインの民主化という意味でも、特筆すべき一脚です。
2. デザインの背景 ──「ビッグ・イージー」から生まれた名作の系譜
ドントエフケーウィズザマウスの原点は、ロン・アラッドが1988年に発表した「ビッグ・イージー(Big Easy)」です。
粗削りに溶接された鋼板から生み出された原型は、最初期には彫刻作品に近い存在でした。
その後、ラッカー仕上げのカラー版(1990年代)、モローゾとの協業によるファブリック版など、幾度もの変容を重ねてきました。
ビッグ・イージーの丸く大きな背もたれは、耳のような二つの膨らみを持ちます。
世界的に知られるあのネズミのキャラクターを連想させると評され、デザイン界ではながらく愛称で親しまれてきました。
2020年、ロン・アラッドはこのシルエットを再び手に取り、ロサンゼルスのギャラリー「オーバー・ザ・インフルエンス」での展覧会用に「ドントエフケーウィズザマウス(D.F.W.T.M.)」シリーズを制作しました。
コロナ禍により展覧会はオンライン開催となりましたが、その作品群が世界的な注目を集めたことをきっかけに、キーブーによる工業生産へとつながりました。
ギャラリー作品から工業製品へ──その経緯が、この椅子に一枚の芸術作品としての気品をいまも宿らせています。
3. 素材と仕様 ──イタリア製ポリエチレンの実力
ドントエフケーウィズザマウスは、回転成形(ロータリーモールディング)によるリサイクル可能なポリエチレン製です。
軽量ながら高い耐候性を持ち、屋内・屋外どちらの環境にも対応します。
素材はリサイクル可能で、長く使い続けることを前提とした設計思想が全体に貫かれています。
主な仕様
・サイズ:幅90 × 奥行66 × 高さ85cm
・座面高:約45cm
・重量:約10kg
・素材:リサイクル可能なポリエチレン(PE)
・成形方法:回転成形
・使用環境:屋内・屋外対応
・カラー展開:グリーン、ホワイト、レッド、オレンジ、イエロー、ライトブルー、パープルほか
・製造:イタリア製
4. スタイリング提案 ──屋内・屋外での活かし方
【リビング・書斎に】
ホワイトやライトブルーは、コンクリート壁やナチュラルウッドの床と相性が抜群です。
ミッドセンチュリーのサイドテーブルや間接照明と合わせると、デザイナーズインテリアとしての存在感が際立ちます。
【ガーデン・テラスに】
グリーンやイエローは、芝生や木々の緑との調和が自然で美しく決まります。
レンガ敷きのパティオや白いフェンスを背景にすると、まるでセレクトショップのディスプレイのような演出が生まれます。
【商業空間・オフィスに】
エントランスやブランドショップの一角に置くだけで、そのアームチェアがアイコンになります。
「語れるインテリア」を意識するブランドやクリエイターの空間にとりわけよく馴染みます。
【アートとして飾る】
複数の色を並べる「コレクション的な置き方」も一つの手法です。
ロン・アラッドの作品に親しんでいる方なら、一脚を所蔵することで空間の格がひとつ上がります。
まとめ
キーブーのドントエフケーウィズザマウスは、1988年にロン・アラッドが「ビッグ・イージー」として発表し、2020年のギャラリー展覧会を経て工業製品化されたアームチェアです。
キーブーのインテリアを代表する一脚として、デザイン好きの方にも、はじめてのデザイナーズ家具をお探しの方にも、強くおすすめできる作品です。
アワード受賞歴
本製品を手がけたロン・アラッドは、2002年に英国の権威ある称号「ロイヤル・デザイナー・フォー・インダストリー(RDI)」を授与されています。
また、2011年には「ロンドン・デザイン・メダル」を受賞しており、現代デザイン界における確かな評価を裏付けています。
デザイナープロフィール
ロン・アラッド / Ron Arad
1951年、イスラエル・テルアビブ生まれ。エルサレムのベザレル芸術デザイン学院で学んだ後、ロンドンの建築協会付属建築学校(AA)を1979年に修了。1981年にデザイン・製作スタジオ「ワン・オフ(One Off)」を共同設立し、チューブラースチールのフレームにローバー社製レザーシートを組み合わせた「ローバーチェア」でデビューを果たしました。
1989年には建築・デザイン事務所「ロン・アラッド・アソシエーツ」を設立。素材と構造への飽くなき探求は、鉄鋼、アルミニウム、ポリアミドから現代のポリエチレンまで、常に時代を先取りしてきました。ヴィトラ、カルテル、モローゾ、アレッシ、スワロフスキーなど国際的な主要ブランドとの協業も多数。2010年には自身の設計によるイスラエルのホロン・デザイン博物館が開館し、建築家としての顔も持ちます。