FLOS（フロス）「TARAXACUM（タラクサム）」は、カスティリオーニ兄弟が1960年に発表したCOCOON樹脂のペンダントライトを起点に、1988年の「TARAXACUM 88」シリーズへと進化したFLOSの象徴的作品です。
初代は繭のような柔らかな光を生み出し、88では多数の電球を幾何学的に配した構造美を追求。
ペンダントやウォール／シーリングなど多彩な展開を持ち、「柔らかな拡散光」と「建築的な光の彫刻」という二つの異なる表現を同じシリーズ名で体現している点に大きな特徴があります。
その名は「たんぽぽ」の学名Taraxacumに由来し、綿毛のように広がる光のイメージを重ねています。

1.1960年 COCOONによる繭のような光
FLOS創業期に登場した初代TARAXACUMは、新素材「COCOON」樹脂をスチールフレームに吹き付けて成形したペンダントライトでした。
繭やたんぽぽの綿毛を思わせる柔らかな拡散光が特徴で、当時の照明デザインに革新をもたらしました。

2.TARAXACUM 88（1988年） ― 多数の電球による構造美
約30年後に発表された「TARAXACUM 88」は、全く異なるアプローチを採用。
正三角形のアルミパネルを組み合わせたフレームに、15個から60個ものクリア電球を配した構造体で、光そのものを建築的に見せるデザインです。
クラシックなシャンデリアを現代的に再解釈した存在として高く評価されています。

3.シリーズ展開と多様な用途
TARAXACUM 88は、ペンダントタイプ（88S）やウォール／シーリングタイプ（88 C/W）など複数のバリエーションを展開。
住宅の吹き抜けからホテルのロビーまで、スケールに応じて選べる柔軟性を持ちます。
初代の「柔らかな拡散光」と、88シリーズの「構造的で力強い光」という二つの方向性が、同じ名前の下で共存している点がユニークです。