まるで空中に浮かぶモビールのように、重力の法則を利用してバランスを保つFLOS（フロス）「265」。
イタリアの建築家パオロ・リザットが1973年に生み出したこのウォールライトは、自由自在に角度を変えられる可動アームと360度回転するヘッドが特徴です。
半世紀を経た今も、機能美と彫刻的な造形が空間に個性をもたらす名作照明として、世界中で愛され続けています。

1. 265の特徴｜重力に逆らわず、自在に動く照明
265の最大の魅力は、最長約205cmにも及ぶ調整可能なアームです。
壁面から大きく張り出し、ダイニングテーブルやソファの上まで光を届けます。
照明ヘッドは360度回転し、どんな方向にも光を向けられます。
鋳鉄製の円錐形カウンターウェイトが絶妙なバランスを生み出し、アームを水平にも垂直にも動かせる仕組みです。
ON/OFFスイッチはソケットホルダーに配置され、操作性も抜群。壁面取付タイプながら、フロアライトやペンダントライトのような自由度があります。

2. デザインの背景｜カルダーのモビールから着想を得た機能美
パオロ・リザットは主に建築を専門とするデザイナーでしたが、1973年に初めて照明デザインに挑戦したのがこの265です。
デザインの着想源は、アメリカの彫刻家アレクサンダー・カルダーの「モビール」。
空中でバランスを取りながら動く彫刻作品のように、265も重りとアームの絶妙なバランスで自立します。リザットは色彩にもこだわり、オリジナル案では機能ごとに原色を割り当てました。
最も重要なヘッドは赤、重りは黄色、アームは青。この配色は「各部品の機能を明確にする」という設計思想の表れです。

3. 素材とディテール｜精密な設計が生む調整自在の構造
本体は塗装スチール製のアームとリフレクター、クロームメッキ真鍮製のリフレクターサポート、鋳鉄製の先細りカウンターウェイトで構成されています。
壁面固定部も塗装スチール製で、堅牢性を確保。アームの長さは標準モデルで約205cm、壁面からの奥行きは約85cmにも達します。
電源コードは約200cmの長さがあり、コンセント位置を気にせず設置可能です。
カラーはブラックとホワイトが定番で、2021年には原色配色の「265 Chromatica」も登場しました。
イタリア製ならではの精緻な仕上げが、長期間の使用に耐える品質を支えています。

4. インテリアコーディネート｜空間を彫刻的に演出する配置術
265は壁面照明でありながら、可動範囲の広さから多彩な演出が可能です。
ダイニングテーブルの上に配置すれば、テーブルライトのように食卓を照らし、食事の時間を特別なものに変えてくれます。
リビングではソファ脇の壁に取り付けて読書灯として、または間接照明として天井や壁を照らす使い方もおすすめです。
書斎ではデスクライトとして、寝室ではベッドサイドライトとして活躍します。黒は洗練されたモダン空間に、白は北欧スタイルや明るい空間に調和します。
265 Chromaticaのカラフルなモデルは、子ども部屋やアトリエなど遊び心のある空間にぴったりです。 5. 265 Smallと265 Chromatica｜進化を続ける名作
2022年には、よりコンパクトな「265 Small」が発表されました。標準モデルより短いアームを持ち、小規模な空間にも対応します。
機能とデザインはそのままに、より汎用性を高めたバージョンです。
また、2021年に登場した「265 Chromatica」は、リザットの当初のカラー提案を具現化したモデル。
赤いヘッド、青いアーム、黄色い重りという原色の組み合わせが、デザインの意図を視覚的に伝えます。色が単なる装飾ではなく、機能を明示するツールとして使われている点が特徴です。
50年の時を経て進化を続ける265は、時代を超えて愛される普遍性を持っています。