【名作デザイン図鑑】天井工事不要で理想の照明を実現。革新的フロアライト フロス「アルコ|Arco」
2025年11月18日
トーヨーキッチンスタイル オンラインショップ 名作デザイン図鑑 フロス アルコ

時代を超えて愛される名作家具や照明。その中でも、革命的なフロアライトとして知られる「アルコ」をご紹介します。
実用品でありながら芸術作品として世界的に評価される、唯一無二の存在です。

アルコ|Arco 基本情報


デザイン:アキッレ&ピエール・ジャコモ・カスティリオーニ|Achille & Pier Giacomo Castiglioni|イタリア
製造:フロス|Flos|イタリア
発表年:1962年
カテゴリ:照明・フロアライト



<目次>

1.天井工事なしでペンダントライトの機能を実現 2.デザイナー カスティリオーニ兄弟の革新思想 3.素材へのこだわり:重厚な大理石ベースと美しいアーチ 4.インテリアコーディネート実例:空間別の活用法 5.芸術作品として認められた照明:著作権保護と美術館収蔵 6.ロングセラーの実績:60年以上愛され続ける名作 7.アキッレ・カスティリオーニの遺産:デザインと芸術の境界を越えて





1. 天井工事なしでペンダントライトの機能を実現


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Ph. gionata xerra

1960年代初頭、社会の変化とともに柔軟な住空間が求められました。 アルコは、天井に穴を開けずテーブル上を照らす画期的な照明として誕生します。固定配線から解放された自立型の設計は、当時の課題に対する完璧な答えでした。 トーヨーキッチンスタイル オンラインショップ 名作デザイン図鑑 フロス アルコ

カスティリオーニ兄弟はパリの街灯からヒントを得ました。
デザイナーの娘ジョヴァンナは「父と叔父が歩道の街灯を見て着想した」と語っています。ベースから光源まで約220cm。
ダイニングテーブルの中央を照らしつつ、椅子の後ろを人が通れる絶妙なバランスです。
空間の機能性と美しさを両立させた、緻密な設計思想が息づいています。


2. デザイナー カスティリオーニ兄弟の革新思想


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Ph. gionata xerra

アキッレ・カスティリオーニは1918年生まれ。兄ピエール・ジャコモは1913年生まれ。二人はミラノ工科大学で建築を学びました。
戦後イタリアの復興期、伝統工芸から近代工業デザインへの転換期を生きた彼らは、アヴァンギャルドの最前線に立っていました。
木材とアルミニウムなど異素材を組み合わせた実験的作品を次々と発表。アルコもその流れにあります。

レディメイドの思想から生まれたデザイン



1960年代、既製品を再解釈する「レディメイド」が流行しました。マルセル・デュシャンが開拓した芸術運動が発端です。
アーティストの選択により日用品が芸術へと昇華される、という考え方です。

カスティリオーニ兄弟も同じアプローチで、市場にある製品を活用しました。
曲げ鋼材が非常に機能的だと発見したのです。自転車サドルを座面にした「セラ」チェア、トラクター座席を転用した「メッツァドロ」チェアと同じ文脈です。
アルコは工業製品の美学を室内へ持ち込む試みでした。

遊び心とユーモアがデザインの原動力



アキッレは生前こう語っています。「すべてを真剣に受け止めすぎる病を嘆く。常に冗談を言うことが秘訣だ」。 この遊び心こそ、カスティリオーニ作品を貫く精神です。機能と詩情を融合させる原動力でした。

3.素材へのこだわり:重厚な大理石ベースと美しいアーチ


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50kgを超えるカッラーラ産大理石



アルコの特徴は、重量50kg超の大理石ベースです。クローム仕上げのボール型シェードと湾曲したスチールアームを支えます。

「対重の問題がありました。重い質量が必要でした。最初はセメントを考えましたが、大理石を選択。同じ重量でもサイズを小さくでき、高い仕上げなのに低コストになったからです」とアキッレは語っています。

トスカーナ北部で採掘されるカッラーラ大理石は、イタリアデザイン史と深く結びついています。
何世紀もの伝統に敬意を表しつつ、超現代的なデザインの一部としてミニマルな形態で型を破りました。

実用性を追求したディテール



ベース中央の穴は装飾ではありません。ほうきの柄などを通し、二人で持ち上げて移動するための実用的な工夫です。

大理石ベースの角は意図的に面取りされています。ぶつかった際の怪我を最小限に抑える設計です。
細部への配慮が、カスティリオーニ兄弟の思慮深さを物語ります。

機能美を体現するアーチとシェード



アーチは3つの湾曲スチールセクションで構成。電気ケーブルの通路も兼ねます。
ベースから半球形のランプホルダーまで、2mにわたってケーブルを導きます。

シェードは2重構造で、向きを自由に調整可能です。シェード上部の放熱穴は、機能的役割だけでなく天井方向へ光を拡散させる構造。
すべての要素が機能的必然性を持ち、無駄のない設計思想を体現しています。


4.インテリアコーディネート実例:空間別の活用法


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Ph. gionata xerra

ダイニングルーム:レストランのような上質空間



モダンなダイニングでは、テーブル端に大理石ベースを配置。アーチをテーブル中央へ伸ばす配置が効果的です。

ウォルナット材の天板とレザーダイニングチェアを組み合わせれば、アルコのメタリックな輝きが洗練されたコントラストを生み出します。
天井照明を抑え、アルコの直下照明で食卓を演出。レストランのような上質な雰囲気が実現します。

リビングルーム:読書スペースを演出



L字型ソファの角に設置し、読書スペースを演出する使い方も魅力的です。
アーチの調整可能な高さにより、床から最大約241cmまで光を投影できます。

重いベースはランプを固定するだけでなく、小さなサイドテーブルとしても機能します。
大理石の白とファブリックソファの温かみが調和。北欧スタイルとイタリアンデザインの融合を楽しめるでしょう。

書斎・ホームオフィス:作業スペースに知的な温かみを



デスクの横に配置し、執筆や作業スペースを照らす実用的な使い方も可能です。
コンクリート壁や金属製の家具と組み合わせれば、インダストリアルスタイルの空間に知的な温かみを加えられます。

アルコのシェードは二重構造。外側を回転させて光の方向を調整できるため、用途に応じた柔軟な照明計画が可能です。


5.芸術作品として認められた照明:著作権保護と美術館収蔵


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Ph. gionata xerra

2011年、アルコはその象徴的なデザインが認められ、著作権保護を受けました。照明として初めての栄誉です。
おそらく歴史上最も有名なランプとなり、長年デザインアイコンとして芸術作品とみなされるようになりました。

現在、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ミラノ・トリエンナーレ美術館、ポンピドゥー・センター(フランス)をはじめ、世界の主要美術館の永久コレクションに収蔵されています。
産業製品でありながら芸術作品として評価される稀有な存在です。デザインが持つ文化的価値を証明する象徴でもあります。


6.ロングセラーの実績:60年以上愛され続ける名作


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Ph. gionata xerra

1962年から1982年の間に、40,000台以上が日本を含む世界中で販売されました。
2012年には誕生50周年を記念してLED版をリリース。フロス社の50年の歴史とも重なります。

さらに2022年、誕生60周年記念として大理石の代わりに無鉛クリスタルガラスを使用した限定版「アルコ K」が登場。伝統を守りながら進化する姿勢は、真の名作だけが持ち得る時間軸を示しています。




7.アキッレ・カスティリオーニの遺産:デザインと芸術の境界を越えて


2002年に亡くなる前、アキッレは多くの芸術家やデザイナーから最も重要なイタリアの建築家の一人として認められていました。
彼の作品は、ダダイズムに例えられることもあれば、初期のポストモダニストと位置付けられることもあります。

ユーモアを見るか、優れたデザインの誠実さを見るか。あるいはその両方を見るか。アキッレの創造物は芸術とデザインの世界において、生き続けているのです。

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