2002年。デザインとアートの境界線はどこにあるのか?
答えがないテーマに正面から向き合い、デザイン=工業製品、プロダクトを超えたアートを模索するプロジェクトが「ノバディ|nobody」でした。
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トーヨーキッチンスタイルが自社工場をおく岐阜県関市は刃物の街です。
日本三大刃物産地のひとつであると同時に、世界三大刃物産地としても知られています。
そして私達トーヨーキッチンスタイルもルーツは刃物の製造です。
刀鍛冶が火の粉の舞う中で鍛えた日本刀のように、道具を芸術品の域にまで昇華させる、そんな思いが心に火を灯したのかもしれません。
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ステンレスという得意な素材を題材に、90年間に渡り培ってきたハンドメイドの「技」、そしてデザイナーの自由で新しい発想による「デザイン」、この2つが鎬を削るプロジェクト。
生産性や採算、効率といった工業製品では免れることのできない縛りから解き放たれたデザイナーの描く自由な線を、「どんなデザインでも形にしてやる」とクラフトマンシップの猛者達が腕組をして待ち受ける、まるで両者の勝負のような緊迫から生み出されたのが、製品を超えてアートに昇華した数々の作品たちです。
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リミッターを解除されたデザイナーだけでも、何千何万と手仕事を反復してきた熟練の職人だけでも、ノバディは生まることはありませんでした。主役は誰でもなく、両者の情熱の賜物です。
既成概念をスクラップアンドビルドして新たな価値を生み出した「ノバディ|nobody」プロジェクト。
ここで培った技術とノウハウは今も製品づくりの礎となっています。
ノバディ C-05
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工業製品としての文脈を通ること無く顕在化した「ノバディ|nobody」の中で、C-05は後にデザインソースとして製品化を遂げた作品です。今もそのまま当時のコードネームのまま販売が続けられています。
座面は緩やかな弧を描き、ステンレスという堅く冷たい素材で、柔らかさをデザインで表現しています。
座面表面は鏡面仕上げ、長く真っ直ぐに伸びた脚部はヘアライン仕上げです。
座面が持つ緩やかで柔らかい印象と、脚が持つ直線的でシンプルな印象のコントラストを表現しています。
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